
私たちが普段着ているTシャツ。1着作るためには、なんと2ℓペットボトル1350本分の水が使われている、と聞いたらどう思うでしょうか。私の率直な感想は「そんなに!?」でした。
なぜ、こんなに水が必要なの?
Tシャツは、ファッションの定番アイテムであると同時に比較的安価な商品でもあります。お洋服が好きな私は、素材や柄、色違いでいろいろなTシャツを持っていますが、その1つ1つにここまでの環境負荷がかかっていたことを、正直全く知りませんでした。その量、人ひとりが飲む水の約3年分に値する数値です。(※1日に必要な水分量を2.5ℓとして計算)
さらに、ジーンズ1本を作るために必要な水の量は、さらに上回ってなんと約7,500ℓ。もはや、2ℓペットボトルに換算すると…?という計算にも目が眩んでしまいそうな数字です。
WWFの記事によれば、洋服の生産にここまでの水量を必要とする主な要因は「綿花(コットン)の栽培」です。
コットンは、その原料が植物由来の製品であることから、環境に優しいイメージがあるかもしれません。
しかし、その原料である綿花の生産過程では、きわめて大きな環境負荷が生じています。
何より問題となっているのは、コットン製品の原料となる綿花の栽培で消費される、大量の水資源。
しかも、綿花はインドや中央アジアなど、もともと水資源が乏しく、貴重な国や地域で盛んに栽培されているため、過剰な水の利用が行なわれると、川や湖沼の水位が下がり、地域の野生生物や人の暮らしが、大きな被害を受けることになります。
人がつくるさまざまな農産物の中で、こうした「水リスク」の高いエリアで作られる割合が最も高いのが、実はコットンなのです。
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4580.html
こうした状況を引き起こしているのは、いわゆる「ファストファッション」のビジネスモデルにあると国連は述べています。売り場には常に新しい服が並び、消費者に買い替えを促す構造が、大量生産と大量廃棄の原因となっているのです。
事実、衣料品の生産量は2000年から2014年までの間に2倍に増えており、できる限り倫理的で持続可能な衣料品の生産を確保することが、きわめて重要となっています。
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32952/
わたしたちにできること
地球環境を守りつつファッションを楽しむために、私たちは何をすれば良いのでしょうか。
まず第一に、一つ一つのお洋服を大切に着る、ということは間違いありません。その他に、サステナブルコットンを使用した洋服を選ぶなど、買うときの意識にも反映することは可能だと思います。
そしてもちろん、アパレル業界の産業構造にも改善の余地はあるでしょう。しかし、ファストファッションのような「いつも在庫があり(大量で)」、「安く」、「多種類の」洋服を求める消費者がいる限り、簡単にビジネスモデルの転換は行えないのではないでしょうか。
欲しいか欲しくないかを、冷静に判断すること。そして、欲しいと思った時に「すぐに手に入る状態」に対して、一度疑問を持つことも大切かもしれません。
何を買って何を買わないか。消費行動は意思であり、「こうありたい」という世界を実現できる、小さな一歩だと私は考えています。そのためには、一人ひとりが「どんな自分になりたいか」「どんな人生を送りたいか」「どんな世界になってほしいか」について、じっくりと向き合う必要も出てくるでしょう。
このインフォグラフィックをきっかけに、自分の着ているものと地球環境とのつながりについて、考えていただけたらうれしいです。
もしサステナブルファッションに興味を持たれたら、環境省によるインフォグラフィックをぜひご覧になってみてください。ファッションの環境負荷から持続可能性まで、とてもわかりやすくまとめられています。
参考
コットンって環境に悪い?サステナブルファッション視点でのコットンの生産と利用(WWFジャパン): https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4580.html
国連、ファッションの流行を追うことの環境コストを「見える化」する活動を開始(国連広報センター): https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32952/
サステナブルファッション(環境省): https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/