ファッションとサステナビリティの10年

昨今、ファッション産業の環境的・社会的負荷の高さが話題となっています。

Tシャツ1枚を作るのに大量の水が必要だったり、そうして作られた洋服が一度も袖を通されないまま大量廃棄されているという事実や、

2013年に起きたバングラデシュの縫製工場の事故に象徴される、人権が尊重されない環境での過酷な労働の実態も明るみになっています。

この10年間の間に、それらの問題に対してファッション業界が起こしたアクションについてリサーチし、インフォグラフィックにまとめてみました。
(グラフィックの下部から詳しい解説が始まります。)

2011年:サステナブル・アパレル連合発足

Sustainable Apparel Coalition(SAC)。現在は「Cascale(カスケール)」に名称変更。

2009年にパタゴニアとウォルマートが行った会合を発端に、ファッション産業全体の環境的・社会的課題を解決するための業界団体としてアメリカで設立された。世界各国300以上のアパレル・フットウェアブランド、素材メーカー、縫製工場、関連団体、政府機関等が加盟。

2024年10月現在、日本からは東レ、ファーストリテイリングなどが参加している。

Cascaleのウェブサイト
https://cascale.org/

2012年:ヒグ・インデックス(Higg Index)リリース

Higg Indexは、アパレル製品やバリューチェーンの環境的・社会的影響を計測し、その製品やブランドの持続可能性を評価するツール。SACが開発した。

ブランド(Brand&Retail)・製品(Product)・生産(Facility)の3つの指標から、「素材」や「生産環境」などを測定するツールがある。ブランド自らが設問に答える形式でスコアを算定して評価するもの。

2013年:「ラナ・プラザ(RANA PLAZA)の悲劇」

バングラデシュの首都ダッカ近郊にある、複数の縫製工場が入ったビルで大規模な崩落事故が発生。犠牲者の多くは、グローバルブランドの下請け工場で働く若い女性で、低賃金で劣悪な環境で働かされていたことが発覚した。

しかし当時、ブランドの多くは「そんな状況であることを知らなかった」として責任を否定。業界におけるサプライチェーンの透明化が叫ばれるきっかけとなった。

バングラデシュのビル倒壊事故、死者1000人超す(CNN.jp)
https://www.cnn.co.jp/world/35031896.html

ラナ・プラザ崩落事故とは・意味(IDEAS FOR GOOD)
https://ideasforgood.jp/glossary/rana-plaza-collapse

2016年:英国のNPO「Fashion Revolution」が、SNSで「#WhoMadeMyClothes」キャンペーンを展開

ラナ・プラザの悲劇をきっかけに、消費者の間でも、自分たちの服がどこでどのように作られているかの情報開示を求める声が高まる。

その動きを受けて、英国のNPO、ファッション・レボリューションが発足。SNSを通じたキャンペーン「#WhoMadeMyClothes(私の服を作ったのは誰?)」を展開した。

ブランドタグのついた服を裏返しに着た写真に、「#WhoMadeMyClothes」のハッシュタグをつけて投稿することで、ブランド側に透明性を訴える。

ファッション・レボリューションのウェブサイト
https://www.fashionrevolution.org/

2018年:「ファッション業界気候行動憲章(Fashion Industry Charter for Climate Action)」発表

温室効果ガス削減や脱炭素化など、気候変動対策に対してファッション業界が連携・推進するべき具体的な取り組みを定めたもの。

国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局が主導し、H&M、adidas、Inditex、Keringなどのファストファッションやラグジュアリーブランド、フットウェアブランドに加え、運輸会社や関連団体等が署名。

日本からはアシックス、YKK、ファーストリテイリングが署名している(2021年現在)。

ファッション業界、画期的な気候行動憲章を発表(国際連合広報センター)
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32117

2019年:国連貿易開発会議が、ファッション産業は世界第2位の環境汚染産業であると発表

UN launches drive to highlight environmental cost of staying fashionable(United Nations)
https://news.un.org/en/story/2019/03/1035161

(日本語版)
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32952

2021年:O0uが、製品の環境負荷を「見える化」する取り組みを開始

アダストリアグループ(日本)のブランド「O0u(オーゼロユー)」が、ヒグ・インデックスの「ヒグ・マテリアルズ・サステナビリティ・インデックス」を使用し、消費者が製品の環境負荷を確認できる取り組みを開始。

その商品に使われている素材の製造の環境負荷を、スマイルマークや「杉〇〇本分の削減効果」などで、わかりやすく表示している。

Sustainability – サステナブルブランド O0u
https://o0u.com/pages/sustainability


ネクストアクション

持続可能な仕組みを構築することも大きな柱の一つですが、ファッションを長く楽しめるものにするために、消費者である私たちにできることは何でしょうか?

まずは現状を知ること。自分たちが楽しんでいるファッションにどれくらいの環境負荷がかかっているか、また廃棄された洋服がどのように処理されているのか…センセーショナルに見えるニュースも、実際に起こっている事実です。

サステナブルファッション(環境省)
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion

着られなくなった衣服の“末路”とは…(NHK NEWS WEB)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220218/k10013486591000.html

その上で…私は、「消費行動は意思表示」だと思うんです。企業に対しての意思表示。それは、これだけモノやサービスにあふれた社会の中で、私たちが持てる最大限の「声」です。

誰かの犠牲の上に成り立つものは私たちの生活には必要ない。そんな「声」を託した消費行動。それこそが大きな力を持つはず、つまり、私たち一人ひとりの行動にこれからの持続可能性はかかっているのです。

デザインノート

完成まで足掛け3年…!(笑)ようやく発表できたこのインフォグラフィック。タイムラインをスクロールと共に見せるにはどうしたらいいかを考えて、シャツに見立てるデザインを作りました。

苦労したのは、いろいろな要素をなるべく簡素化すること。インフォグラフィックだけですべての出来事を伝えられるわけではないので、情報の選択・精査は大事な作業です。そこが難しかったですね。

私のInstagramでは、別バージョンのグラフィックを公開しましたので、ぜひこっちも見てみてください!